「法助動詞、英語を勉強しているけど初めて聞く言葉だ……。」と思われても仕方ないでしょう。
私も法助動詞の重要性を学習してからずっとあとになって、「法助動詞」という日本語を知りました。要するに、法助動詞というのは発話者の考えをつけ加えたいときに用いる助動詞のことですね。
私も大学院に入学する前に受講した英語のプリセッショナルコース(precessional course)で、canやwouldといった助動詞の使い方を学習しました。大学(院)のコースワーク(coursework)では小論文(essay)の提出が多く、小論文のなかで自分の意見を主張する必要があります。そこで、自分の意見を反映する表現と事実とをはっきり区別するために、法助動詞が有用なのを教えられるのですね。
英語のライティングやスピーキングに限らず、リスニングやリーディングでも何気なく見過ごされそうな法助動詞。そこで、法助動詞の種類と使い方について紹介します。
能力を表す「can」
英語を学習し始めてから早い段階で登場するcan。「馬鹿にしているの?」と思われるかもしれませんが、なかなか使いこなせていないのですね。
日本人がしばしば間違える例として引用されるのが以下のような文章ですね。
I can not speak Chinese.
(私は中国語を話す能力がない)
中国語圏の国に行って中国語で話しかけられたときに、とっさに出るフレーズです。しかしこのように言ってしまうと、「私は中国語も使えない無能だ」といったニュアンスがあります。
そのため以下のように「can not」ではなく「do not」を使うのがベターです。
I do not speak Chinese.
(私は中国を話せませんよ)
私もcanでは苦い思い出があります。学期末に提出する小論文のテーマの相談で、先生にメールしたときのこと。
I can write my essay on this subject.
(このテーマで小論文を書けますよ)
と連絡すると、
I am unsure if you can write it, but you will write it, won’t you?
(キミがそのテーマで小論文を書く能力があるかはわからないけど、そのテーマで書くのね?)
という返事がきました。英語では同じフレーズを繰り返さずに言い換えるのが基本なので、先生があえて”write it”と繰り返して表現した意図を理解できました。
つまりダイレクトに、
I will write my essay on this subject.
(このテーマで小論文を書きますよ)
と表現すればよかったのです。
頭では文法についてわかっているものの、語学というのは感覚的に身についていることが重要なんだなと思いしらされました。
提案したいときに使う「could」
canだけでもなかなか身につけると自信をもって言えるのには大変なんですが、法助動詞はまだまだあります。
couldというと、canの過去形という印象があるかもしれません。法助動詞の解説書を見ると「示唆・提案/指示・命令」とあります。
You could return my book tomorrow.
(本を明日返してもいいですよ)
のように、示唆を与える表現でcouldは用いられます。
canで言い換え可能ではないの?と思われるかもしれませんが、ニュアンスとしてはcanよりも柔らかい、丁寧な表現ですね。仲の良い友達だとcanを使うといいでしょうが、couldは初めて話す相手であったりやや目上の相手に使用するといったところでしょうか。
確信のもてなさを表す「should」
have toやmustの言い換えとして暗記している助動詞ですね。このshouldですが、発話者の確信をニュアンスとして伝えるときに用いることがあります。日本語に訳すと、「~のはずだ」がぴったりではないでしょうか。
例えば、以下のような会話。
When will your landlord come back?
(いつ大家さんは戻ってくるの?)
He should come back home one day after tomorrow.
(彼はあさって戻ってくるはずだ)
「shouldじゃなくて、willじゃないの?」と思われるかもしれませんが、willだと「あさって戻ってくるのはほぼ間違いないと確信している」というニュアンスが強いですね。100%確信をもてないのでしたら、確信をもてないニュアンスをshouldを使って表現するといいでしょう。
推量を表す「would」
最後に登場するのがwouldです。
willの過去形としてだけでなく、仮定法過去でも用いられるwould。この仮定法過去として用いられるという直観が、wouldを使うときに大事ですね。
If I were you, I would mail him.
(私だったら、彼にメールするけどね)
というのが、仮定法過去ですね。
「あなたと私とは別人だから、あなたがメールするかしないかはわからない」といったニュアンスがある仮定法過去。wouldという法助動詞は、ifのような条件節を使わなくても広く用いることができます。
例えば以下のような文です。
That would be something that we all need.
(それは、われわれ全員が必要なものでしょうね)
ここで、もしwouldがないと
That is something that we all need.
(それがわれわれ全員が必要なものだというのは事実です)
というニュアンスになります。
法助動詞を用いることで、発話者の意見が付け加わります。つまり「ほかの人はどう考えているかはわからないけど」というニュアンスを伝えるのが、wouldなんですね。
まとめ
いかがでしたか。ここで紹介した法助動詞の種類はほんの一部だけです。couldやwouldなどに絞ってもさまざまな用法がありますし、またwillやmay、mightといったほかの法助動詞の紹介まではできませんでした。
法助動詞といっても解釈が難しく、多義的になりがちです。しかし法助動詞を知っているのと知らないのとでは大違いです。ぜひ使用法を身につけて、英語の表現力をアップしてもらえればと思います。
担当ライター:Michikaku(英会話がなかなか上達せず英会話の学習法をいろいろ試した英語オタク。その甲斐あってロンドンにある大学院に留学を果たす。現在は、日本へ帰国し翻訳や学術・教育関連のライター業に従事)