私が海外で生活して感じたのは「簡単な英語の動詞をみんな使っているなぁ」ということです。それと同時に「自分はこういった簡単な動詞をまだまだ使いこなせていないなぁ」と気づかされます。
海外から移住・駐在しているノンネイティブはもちろん、現地のネイティブですら日常会話では簡単な動詞を頻繁に使うのですね。つまり、中学レベルの英語であっても、使いこなすことでネイティブと十分に楽しく会話ができるわけです。
そこで今回は、中学で習う基本動詞の中でも日常生活で便利に仕える"get"の使い方について紹介します。
理解するという意味の"get"
"get"の使い方で最初に覚えるのは、「得る」ではないでしょうか。確かに「得る」という意味はあります。実際、英英辞典には次のように定義されています。
to receive sth(何かを受け取ること)
※sthはsomethingの略称です。英英辞典でよく使われるので、覚えて損はありません。
この「得る」という意味の派生で「理解する(understand)」という意味が生まれてきます。「得る」も「理解する」もイメージとしては自分に取り込むという点で同じですから、覚えやすくそして使いやすい言葉ではないでしょうか。
Got it.(わかった)
というのは会話で頻出ですね。もっと砕けて、
Gotcha.(わかった)
とも言えます。
"Gotcha."は省略ではなく、"I’ve got you."の発音を文字にすると"gotcha"なんですね。実際"gotcha"を使っているのを耳にしたことがありますが、あまり多くはありませんでした(ちなみにイギリス出身の若い学生)。
"got it"ひとつ取っても深く、「どうして主語は省略されているの?」「現在完了じゃなくて過去形なの?」と疑問に思う方もおられるでしょう。
たしかに"got it"は
I got it. (私はそれを理解しました)
の省略形です。
口語だと英語でもわかりきった主語は省略することがあります。また現在完了形を過去形で代用することもしばしば。頭で理解しようとするとなかなか難しいのが、語学ですね。感覚的に使い方を覚えるのがいいかもしれません。
"have"の代用としての"have got~"
現在完了形と"get"との関係でいうと、
Have you got a pen?(ペンを持っている?)
という表現も耳にしますね。この表現はイギリスでよく耳にします。われわれでしたら
Do you have a pen?(ペンを持っている?)
と言ってしまいそうですね。
これももちろん間違いではなく、アメリカでは後者の表現が用いられます。
移動の意味の"get"
ロンドンでフラットシェアをしていた場所があまり治安のよいところではありませんでした。
"tube"(イギリスの地下鉄のこと)の駅に向かうとかならず同じホームレスが物乞いをしているのですね。周りのその人のことを知っているのか、反応を誰も示しません。
ある夜のこと。店でピザを買っていると、そのホームレスが店に入ってきて物乞いをするのですね。そこで店員が
Get away! (あっち行け!)
と何度も言うわけです。
"go"を使いそうですが、"get"なんですね。もっともこの"get"の使い方については、われわれも早い段階で習っています。
We didn’t get to bed until 3a.m.(夜中の3時なってようやく寝た。)
Where do we get on the bus?(どこでバスに乗るの?)
といった表現を習った方もおられるでしょう。ひょっとすると、"get on"(乗る)や"get off"(降りる)という熟語として暗記していたり、
We didn’t go to bed until 3a.m.
の言い換え問題で、"get"を答えさせられたりしたこともあるかもしれません。
中学で習いましたが、「口語で頻出ですよ」なんて教えてくれません(笑)
今だと留学経験のある英語教師も多いかもしれませんが、英語読解偏重の時代だったか「難しい構文の英語が読めればいい」という風潮でした。ともかく、このほかにも"get back"(戻ってくる)など英会話でよく使うので頭に入れるといいでしょう。
ある状態になる"get"
この用法に関しては、よく頭に入っている方も多いかと思います。”get sick”(具合が悪くなる)のように、"get"に続く形容詞の状態に変化することを意味します。
おそらく気になるのは、"become"や"turn"との違いではないでしょうか。これら2つの単語も"get"と同じような用法があります。むしろ、「~になる」を"become"で暗記している方も多いのでは。
"become"は
She became queen in 1952.(彼女は1952年に女王になった。)
のように用いられます。"get"よりもフォーマルな動詞ですね。
英英辞典の説明では、"get"と"become"はほぼ同じとなっています。長い期間ある状態に変化する場合には"become"、短い期間ある状態に変化する場合には”get”という説明がネットで散見されます。根拠として挙げられるのが、
I got this cold off you!(君から風邪をうつされた!)
のように、具合がまもなくよくなるというニュアンスで用いる"get"ですね。ただ"become sick"とも言えますので、英英辞典に準拠する形で"become"と"get"の違いを理解するのが一番ではないでしょうか。ちなみに私のイメージも、英英辞典に近いですね。
最後に"turn"ですが"turn red"(赤くなる)のように色とセットに覚えるといいのではないでしょうか。違う状態に変化する場合に用いるのが"turn"ですね。もちろん、色だけでなくある状態から別の状態になる場合(特に天気)に"turn"は用いられます。
The weather has turned cold. (天気が寒くなった)
などがその一例です。ニュアンスとしては、"get"や"become"がある物理的状態に陥るというイメージであるのに対し、"turn"は変化する点が強調されています。
まとめ
いかがでしたか。"get"は口語では頻出な動詞ですが、教育的配慮などから文語的な用法を習うのに集中しているので使い慣れていないのも致し方ないのかもしれません。
このほかにも、"gotta"(別記事参照)などさまざまな用法がありますので、ぜひ身につけてはいかがでしょうか。
担当ライター:Michikaku(英会話がなかなか上達せず英会話の学習法をいろいろ試した英語オタク。その甲斐あってロンドンにある大学院に留学を果たす。現在は、日本へ帰国し翻訳や学術・教育関連のライター業に従事)