ノーベル物理学賞を受賞した中村氏の研究半生を、英語との関わり合いという切り口からたどった記事がありましたのでご紹介。
私は35歳でアメリカに留学するまで、英語にはまるで縁のない生活でした。学生時代から暗記を強要する科目はことごとく嫌いで、英語も大嫌い。数学や物理学の原著を英語で読むのは楽しいと思ったけど、最後まで読み切ったためしがなかったし、田舎育ちだからスピーキングなんてからっきしダメ。
英語は「どうにでもなる」というやけっぱちです。会社の資金援助があって徳島の有名な英会話学校に通いましたが無駄でし た。アメリカに着いて、経由地のアトランタ空港のアナウンスもまったく聞き取れなくて、搭乗時間が過ぎても呼び出されないからおかしいなと思ってゲートに 行ったら「もう飛行機のドア閉まったよ!」(笑)。それくらい英語は全然わからなかったです。最初に書いた3本の英語論文は、投稿したら全部あっさり落とされました。なぜかって?「英語がまずい」だって(笑)。
カリフォルニアに渡る前夜、とにかく嫌だったのは英語の講義ですよ。緊張して気絶しそうでした。私は20年間会社員だったから、学生相手に講義したことがないうえ、博士課程を経験していない論文博士です。日本で講義するのでさえも緊張するだろうに、ましてやそれがアメリカで、博士課程で、しかも英語でしょ。最初の講義の思い出は…まずい講義やったなぁ(笑)。とにかく英語がまずいって落ち込みましたよね。
英語の上達のためなら何でもやりました。大学内にある英会話学校にも行こうかなと思った。でも、時間がないとは言い訳にならないけれども、英語より研究が大事だし、講義の準備や研究と並行して通学するのは無理だと思ったんです。そもそも赴任したのが46歳。その歳から語学を始めるのは無理ですって!
私は英語の志はもう捨てました。もちろん、英語ネイティブに生まれなかったことを恨みもします。しゃべりが不得意ですから、極端に言えば社会に溶け込めずに「引きこもり」にもなります。実際、ここの生活になじむまでに家族みんながノイローゼみたいな時期もありました。私は今でも、アメリカ人同士のディスカッションには加われない。彼らがわぁーっと好き勝手しゃべると、正直お手上げです。
日本人が英語社会で引きこもりになるのは珍しいことではありません。実際、私の知っている研究室で、アメリカ人学生と日本人学生のグループが対立している例もあります。アメリカ人学生は集めたデータを持ち寄ってディスカッションしたいのに、日本人学生は英語に自信がないから尻込みする。アメリカ人はその態度を「あいつらデータを隠して見せようとしない」と感じるわけです。それでお互いの気持ちが通じずにいがみ合っている。まさに英語の壁です。
私も経験があるから引きこもりになる気持ちはわかるし、英語社会で生きる心のつらさは精神分裂になってもおかしくないと想像しますが、こんな貧困な英語力では、世界を舞台にしたサイエンスなんてできるわけがない。つくづく日本の理系学生は日本語を捨てるくらいの覚悟で英語をやらなければ、日本のサイエンス は今後どんどん国際レベルから立ち遅れていくでしょうね。
英語が大の苦手で46歳にして渡米した中村氏ですが、なんだかんだで、カリフォルニア大学での教授歴は10年以上。英語力もネイティブ並なのかなぁと思ったのですが、昨日のスピーチを聞いた限りでは、いかにも日本人的という印象でした。
ただ一方で、40過ぎて英語を始めても英語力は身につくんだ!とちょっと自信が付いた方も多いのではないでしょうか?
ご覧になっていない方はYoutubeに動画が上がっていましたのでどうぞ↓
ちなみに、この動画をイギリス人の先生に見せた所、ほとんど理解できないって言われてしまいました(^^;